医療あれこれ

糖尿病性認知症

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 糖尿病は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症の危険因子であることを以前にご紹介しました。(医療あれこれ 2012318)最近、糖尿病が危険因子となってアルツハイマー型認知症を合併したと診断されている例や、同じく糖尿病が原因の脳血管性認知症とされているもののなかに、アルツハイマーや血管性認知症とは異なる「糖尿病性認知症」と呼ぶべき病態のあることが明らかとなってきました。血管性認知症では、脳血流検査で大脳のある部分に血流障害が証明されますし、アルツハイマーではアミロイドという異常タンパクが集積されているのですが、これらの変化が全く認められない糖尿病に合併した認知症なのです。これも以前に老化物質としての糖化反応最終産物(AGE)についてご紹介しましたが(医療あれこれ2013113)、この糖尿病性認知症では、AGEの一つであるカルボキシルメチルリジン(CML)の血中濃度が上昇している特徴があります。

 この糖尿病性認知症の臨床的特徴は、高齢の患者さんで、ヘモグロビンA1cが特に高値である、インスリン治療を受けている、糖尿病を発症してからの期間が長い、進行がゆるやかである、などの特徴があります。このため治療としては、食後の高血糖を下げ、血糖値の日内変動を抑制し、治療の効きすぎによる低血糖を避けることなどが求められます。

 今後されに検討が必要ですが、より厳密な糖尿病コントロールを行い、そのために必要な新薬を含めた適切な使用が重要になってくると思われます。

文献:羽生春夫他:日本内科学会誌、2014; 103: 1831-8.