医療あれこれ
尿酸には強力な抗酸化作用がある
人において血液中の尿酸値はプリン体の最終代謝産物で、尿酸自体が水に溶けにくく、血中濃度が高くなると尿酸は結晶を作り、それが関節に蓄積して痛風発作の原因となるということを、このページでも何度かご紹介してきました(2012年4月8日付医療あれこれ他)。それでは「尿酸というものは血液中の老廃物で、多量の尿酸は人の体にとって必要なものではない」から血液中の尿酸値は低ければ低いほどよいのでしょうか?
実は尿酸には強力な抗酸化作用があるのです。抗酸化作用をもつ抗酸化物質は、人の体の中でおこる酸化的ストレスを抑制するものです。酸化的ストレスが蓄積すると、人は老化し、血管の障害がおこり、脳などの神経細胞が障害されるなど多くの好ましくない状態を作り出しますが、抗酸化物質はこれらを抑制する作用を持っています。ビタミンCは典型的な抗酸化物質として知られています。お肌を若々しく保つためにはビタミンCは必要不可欠であることはよく知られた事実ですが、尿酸がもつ抗酸化作用はビタミンCよりはるかに強力です。
人の血中尿酸値は他の哺乳動物に比べて正常でも高い値であるとされています。一説によるとこれが人間は他の哺乳動物に比べて寿命が長いことにつながるそうです。またアルツハイマー病やパーキンソン病の人のうち異常に血中尿酸値が低値な場合があることも報告されています。つまり尿酸がもつ抗酸化作用が不足すると老化を早め、神経疾患の原因を作ってしまうというのです。これらのことを考慮すると、尿酸がもつ抗酸化作用は人体にとって必要なものです。ただし血中尿酸値が高すぎると痛風の原因となってしまいますので、血液中の尿酸値は多すぎず、少なすぎずということが理想的だと考えることができます。