医療あれこれ
どんな運動をしても高齢者の死亡リスクが下がる
運動をする習慣のある人は高齢になっても死亡リスクは下がるのではないかということは想定されています。それではどんな運動をどの程度すればより効果的に死亡リスクを下げるのでしょうか。この疑問に答えるように、運動の種類にかかわらず体を動かす習慣のある人は高齢になっての死亡リスクは低くなるというデータが公表されました。公表したのはアメリカの国立ガン研究所Watts E.氏らで、学術論文JAMA Network Open に8月24日掲載されたものです。
研究は、アメリカ国立衛生研究所と全米退職者協会が27万人余りの高齢者(平均年齢70.5±5.4歳、男性58%)を対象として生活習慣と健康に関するアンケート調査を2004年~2019年(12.4±3.9年)おこなったデータを解析しました。この調査期間中に約12万人(43%)の人が死亡しています。
死亡リスクに影響する因子、たとえば年齢、飲酒・喫煙などの生活習慣、ガン、脳卒中、などを調整して解析されました。その結果、全てのスポーツについてしている人は、していない人に比べて死亡率が有意に低いことが解りました。スポーツの種類別で死亡率の低下をみると、テニスなどのラケットスポーツは16%、ランニングでは15%、ウォーキングは9%、エアロビクス体操は7%、ゴルフは7%、水泳は5%、サイクリングは3%の低下など程度の差はありますが、何もしていない人に比べてスポーツをすることにより死亡率が低下しています。
死因別でみるとスポーツの種類によりリスク低下率に差があることも判りました。例えば心臓血管死は、ラケットスポーツでは27%、ウォーキングで、11%それぞれ低下していました。ガン死も、ランニングで19%、エアロビクス体操で9%、サイクリングで6%とそれぞれ死亡率の低下がみられました。これらのうちでスポーツと心臓血管死は関係性があるような想像はできますが、ガン死とスポーツには直接関係はないようにも思われるにも拘わらず、スポーツをすることによりガン死のリスクが低下するという結果は興味深いと思われます。
著者らのコメントでは、「スポーツをすることにより死亡リスクがさげられることが明らかとなったが、問題は今後、健康生活にスポーツを積極的に取り入れていくという生活習慣を変えることを定着させていくことが重要だ」と述べています。