医療あれこれ

猛暑は心臓血管に重大な影響を及ぼす

 このところの異常な気温上昇は人の体にさまざまな悪影響を及ぼしますが、今回の話題は新聞、テレビなどで連日伝えられるような熱中症に気をつけてといった個々の病態に関したことだけではありません。高熱、熱波が人間の心臓血管関連の死亡率に重大な危険を与える事を大規模な疫学的データ解析により明らかにした結果を公表した学術論文が示されました。研究をおこなったのはオーストラリアのアデレード大学公衆衛生学の研究グループです。

Liu J et al. Lancet Planet Health 2022, Jun: e484-95.

分析に用いた基礎データは19901月から20223月までに報告された7,360件の論文のうち分析に用いることが可能な条件に合う266件の分析を対象として検討されました。

 結果の概要は、世界中で基準温度より気温が1℃上昇するごとに心臓血管関連の死亡率が2.1%増加し、心臓血管疾患関連の罹患率、つまり病気にかかる率が0.5%増加することが示されたのです。そして気温が上がるにつれて死亡率が上昇するという正の相関関係が認められました。臓器別で疾患を分けてみると、脳血管疾患が3.8%、心臓の冠動脈疾患が2.8%それぞれ増加したそうで、これらの発生は不整脈と心停止に関連しており、病院に搬送されるまでの院外で2.1%増加していたという結果でした。

 性別でみると女性の方が、また年齢では65歳未満に比べて65歳以上の人の危険度が有意に高いことが示され、基礎疾患として、高血圧、糖尿病、脂質異常症などをもつ人が危険であることが当然のようにデータとして示されました。検討対象の生活地域の違いでは、温帯地域より熱帯地域の人達に危険度が高いことも判りました。熱帯地域で暑さになれているといった単純な影響だけではどうやらないようです。

 それでは猛暑に対して私たちはどのように対応すればよいのでしょうか。例えば基礎疾患をもつ人はそれらに対してふだん以上に適正に治療をすることは必要ですが、論文の著者らによると、今回の結果を踏まえて地球規模で異常気象に対して基本的な対策が求められることを強く訴えたいようです。