医療あれこれ
卓上の塩をかける習慣は寿命を縮める
食卓の上に置かれている食塩を食事にふりかけて食べる習慣がある人は塩分を摂り過ぎてよくないという可能性をデータで示した米国からの論文があります。
(Ma H.
et al: European Heart J. 10 July 2022: DOI. org/10.1093/euheartj/ehac208)
研究を実施したのは米国テュレーン大学公衆衛生・熱帯医学分野の研究グループです。
塩分過多になると血圧は上昇し健康にはよくないことは一般にもよく知られています。しかし実際どの程度の塩分過多があると血圧が上昇して健康によくないのか?それを論文で示すためには大多数の人について毎日の食塩摂取量を測定し続ける必要があり現実的にはかなり難しい問題でした。
今回の研究者らは食塩摂取量を直接測定するのではなく、食事に塩をふりかける習慣がある人とそうでない人の寿命を比較して食塩摂取量を推定する方法を用いました。研究対象者は約50万人の成人で、アンケートにより食事に塩をふりかける頻度を推測しました。約9年間調査をおこない、塩をかける習慣が全くない人、「たまに」かける人、「たいてい」かける人、「常に」かける人それぞれの早期死亡の割合を比較検討したのです。
その結果、「全くかけない」人における早期死亡する割合を1としたとき、「たまに」かける人は1.02であり、「たいてい」かける人は1.07、「常に」かける人では1.28でした。つまり食事に塩をかける習慣が全くない人に比べて、常に塩をかける人は28%も早期死亡の可能性が高いことが示されたのです。またこれらの対象者が50歳のときの平均余命、つまりあと何年生きられるかの平均値で比較すると、「常に」塩をかける人は男性で2.28年、女性では1.50年短いことも判りました。この結果は、運動や喫煙、飲酒などの生活習慣、あるいは糖尿病などの健康状態による影響を差し引いて検討しても同様だったそうです。
「塩分制限と一口に言っても料理に含まれる塩分を調理の時点で減らすことは簡単にはできないが、食卓にある塩を使わないようにすることの方が単純ですぐにできることだ」と研究者らは述べています。詳細に検討された興味ある論文と思いますが、塩をかける、かけないで実際に血圧がどれだけ違ったのかという結果も知りたいところですね。