医療あれこれ
肥満はガンの発生リスクを高める
体重増加によりある種のガン発生率と死亡率を増加させることが以前より知られていましたが、最近、若年者のメタボリックシンドロームは大腸ガンリスクを高める結果が報告されています。
これはソウル国立大学医学部内科のグループでおこなわれた研究で、韓国の健康保険による健康診断を受診した997万4081人を対象とした調査です。50歳未満におけるメタボリックシンドローム発症と大腸ガン発生の関係が解析されました。
(Jin
EH et al. Gastroenterology 2022 05.25 DOI: 10.1053/j.gastro.2022.05.032.)
結果は、10年間の調査期間中に8,020件の早期発症大腸ガンと57,257件の後期発症大腸ガンが確認されましたが、いずれもメタボリックシンドロームとの有意な相関性がみられました。また個々の測定データでみると、BMIおよび腹囲が高値例では早期発症大腸ガンが有意に増加することが判りました。またガン発症部位でみると大腸のうちでも肛門に近い下行結腸ガンや直腸がんとの関連が有意でしたが、上行結腸ガンなど肛門より遠い部位に発生するガンとの関連は有意ではありませんでした。
研究者らは、メタボリックシンドロームを解消することが50歳未満の比較的若年者における大腸ガンリスクを減らすことにつながると述べています。
一方、米国では体重を減らす減量手術をおこなうとガン発症率が低下するというデータが、オハイオ州クリーブランド・クリニックの研究グループから公表されています。
(Aminian A et al. JAMA 2022 06.28
DOI: 10.1001/jama.2022.9009.)
これは、肥満の対象者において胃切除などの減量手術を受けた群と、手術を受けなかった群を10年間観察すると、減量手術を受けた群においてガン発症率は有意に低下していたというものです。
以上、二つの論文は、肥満者においてはあらゆる方法を用いて体重減少をおこなうとガン発症を抑止できることを示していると考えられます。