医療あれこれ
日本の高齢者は認知機能が向上している
超高齢社会の日本において歳を重ねてもより健康な生活を送るためには認知症になることを抑止することは重要です。このたび2010年から2017年の間に高齢者の認知機能はどのように変化しているかを研究調査した結果が国立長寿研究センターから報告されました。
(Nishida Y. et al: Arch Gerontol Geriatr. 2022 DOI;10.1016/j.archger.104718)
この研究は2010年と2017年に疫学研究対象に参加していた65歳以上の男女について調査した認知機能検査(ミニメンタルステイト検査 MMSE)の結果を比較検討したものです。2010年は8,575人の男女、2017年は6,089人を対象とし、30点満点のMMSE結果が28点以上を認知なしの群、23点未満を認知症が疑われる群として集計したものです。
結果は上のグラフからわかるように、男性も女性も、また各年代でみても、認知機能が良好な人が、2010年に比べて2017年では増加していることが判りました。
研究グループの分析では、80歳代の女性で大きく認知機能の改善が見られた要因としては、喫煙や飲酒が過度になる割合が少なく、脳血管障害などの危険因子をもつ人が少ないことが挙げられています。このことは高齢の女性において健康寿命が長いことを示唆するものと考えられます。また男性の場合、60歳代の認知機能改善が比較的大きかったと思われますが、この要因は脂質異常症や心血管疾患に対する医療などの対応が効率よくできていたことが可能性として考えられると考察しています。
さらに各期間において平均教育年数が調べられましたが、2010年は11.34年であったのに対して、2017年は12.47年であったことが判りました。これだけで一概には結論できませんが、乱れた生活習慣を是正することや、疾患などに対する対応が確実におこなわれるようになったことがあり、健康増進につながった可能性も想定されます。