医療あれこれ

筋トレをやり過ぎると健康リスクが増大する

 運動習慣は健康増進に必要なことはいうまでもありません。しかしこれまで体によいとされているのは有酸素運動が中心で、体に負荷をかける筋肉トレーニング(筋トレ)が健康維持に有効かどうかについて系統的に検討された調査研究成績は多くはありませんでした。このたび東北大学運動学専門分野の門間陽樹氏らは体に負荷をかける運動や筋トレなどと死亡率やガン、糖尿病、心臓血管疾患などの疾患発生との関連についての検討をおこない、結果をBr J. Sports Med 2022, Feb. 28に公表しています。

 この研究は18歳以上の成人を対象として筋トレと死亡や各種疾患との関連を検討したものです。その結果、筋トレを全くしない群と比べて筋トレ実施群では全死亡、心臓血管疾患、ガン、糖尿病のリスクが1017%低いことが示されました。つまり筋トレをすれば全死亡を始めとしたこれら疾患は発生しにくいことが判ったのです。しかしガンのうちでも大腸ガン、腎ガン、膀胱ガン、膵ガンとの関連はありませんでした。

 また筋トレの実施時間をみると週に約3060分で全死亡、心臓血管疾患、全ガンのリスクが最も低く、約1020%のリスク低下となるそうです。しかし実施時間をより長時間にした場合、130140分を超えるとこのリスクが上昇に転じることが判りました。つまり時間経過を横軸にグラフを描くとJ字型の効果になることが明らかとなったのです。

 一方、筋トレ実施時間と糖尿病リスクの関係をみると、週に60分に達するまで糖尿病リスクの低下がみられ健康増進効果が上昇しますが、さらに時間を増やしてもリスクは低下したままで効果は持続することが判りました。どうやら糖尿病に対する筋トレ効果についてのみ、やり過ぎても効果が落ちることはないことになるのでしょう。

 以上の結果から、研究者らのまとめとして、筋トレの実施は長期的に見て健康増進効果があることが明らかとなったが、糖尿病の場合をのぞいて、やり過ぎると血管障害やガン、死亡に対する健康効果は得られなくなる可能性が示唆されたと述べています。何事も過ぎたるは及ばざるが如しといわれますが、筋トレの場合、週に3060分程度がほどよいということになるのでしょう。