医療あれこれ

携帯電話使用で脳腫瘍になる?

 これまで携帯電話を耳に押し付けて長時間使用すると、脳は高周波や電磁波の影響を受け脳腫瘍が発生するリスクがあるのではないかと考えられていました。以前の日本における見解では、長時間の携帯電話使用により脳腫瘍のうち悪性である神経膠腫(グリオーマ)が発生する可能性があるとされていました。(国際ガン研究機関 International Agency for Research on Cancer: IARC

これは20002004年に診断された2704人のグリオーマ患者と2972人の健常対象者を比較検討して、特に携帯電話を使用したことがない群に比べて、14年の期間に1640時間以上携帯電話を使用した群では1.4倍グリオーマ発生が多かったなどのデータを基にしたものでした。

 一方、2022年のオックスフォード大学における検討結果では、1996年~2001年の期間に、1935年~1950年に生まれた130万人の女性を対象として2001年~2011年の期間に悪性腫瘍登録された脳腫瘍症例3268例を解析したものです。脳腫瘍のうち良性腫瘍である髄膜腫を1.0とした時、すべての脳腫瘍は9.97、悪性腫瘍のグリオーマは0.89であり通常の条件下では携帯電話の使用は脳腫瘍の発生率を増加させないというものです。

 今回の新たな検討、女性で中年以降が対象であり、若年者の検討がなされていないことや、詳細な検討条件が異なることなど単純に比較して結論を出すことはできないとも思われます。しかし必要以上に長時間の携帯電話使用を避けた方がよいなど注意すべき問題点もあると考えられます。