医療あれこれ
緑地が多い所に住む高齢者はうつ症状が少ない
高齢者のうつ症状は介護を必要とする状態に陥りやすいことが知られており、このことを考慮に入れて高齢者の生活環境を整備する必要があります。一方で、緑地が多い中での生活は心理的ストレスを抑制してよい影響を及ぼすことが知られるようになりました。今回、どのような種類の緑地が高齢者にとって理想的なのか、また同じ緑地でも都市型と非都市型でどのような差があるのかを明らかにすることを目的として千葉大学予防医学センターの研究グループにより調査研究され、環境予防医学の学術専門誌である
International Journal of Environmental Research and Public
Health に公表されました。
解析対象は12万人以上、65歳以上の男女で、老年期うつ評価尺度によりうつ状態を評価しました。居住地の緑地データは宇宙航空研究開発機構の観測衛星による衛星写真から緑地の種類として「樹木」「草地」「田畑」これらを合わせた「総緑地」に分類し、人口150万人以上の地域かどうかによって「都市」、「非都市」に分類し、それぞれを緑地が占める面積により〈少〉、〈中〉、〈大〉に分類しました。さらに解析対象者の生活状態を、性別、年齢、教育歴、所得、家族構成、就業状態、外出頻度、車の運転などの影響から調整して統計学的処理をおこないました。
その結果、うつは全体の20.4%でした。地域全体では緑地面積が多い地域では少ない地域に比べ、うつは約10%少ないことが判りました。「都市型」地域では「樹木」が多い地域では少ない地域に比べてうつは6%少なかったのですが、「草地」と「樹木」では差がみられませんでした。これに対して「非都市型」では「草地」が中等度ある地域は少ない地域に比べてうつは約9%少ないという差がありましたが「樹木」や「田畑」では差はありませんでした。
これらの結果から、緑地が多い地域の高齢者はうつが少ないこと、さらに都市では「樹木」が多い地域が、非都市では「草地」が多い地域で打つが少ないことが示されました。つまり都市と非都市で高齢者のこころの健康によい緑地の種類が異なることが明らかとなりました。この結果をもとに高齢者に優しいまちづくりを考えていくために有用な成績であると考えられます。