医療あれこれ
アマゾンの先住民は加齢による脳の変化が遅い
南米ボリビアのアマゾン奥地のへき地に居住しているチマネ族は、欧米先進国住民のライフスタイルとはかけ離れた生活を送っています。狩猟、魚釣、農作などをして暮らし、テレビや動画サイトを観たりしないそうです。 これまでチマネ族は高血圧、糖尿病、肥満、心血管疾患などいわゆる生活習慣病は高齢者でもほとんど観られないことが知られていました。そこでこの民族の脳は先進諸国の人たちの脳より健康な状態が保たれているのではないかとの予測から調査研究がおこなわれました。(Irimia A. et al. J. of Gerontoroly,2021. https://doi.org/10.1093/gerona/glab138)
調査研究をおこなったのはアメリカの南カリフォルニア大学の研究チームです。チマネ族の40~94歳の男女746人を対象として、都会の医療機関に移動してもらい、CTスキャンを実施し年齢による脳の萎縮度を、同じ年齢の欧米人と比較検討しました。その結果、チマネ族では年齢を重ねることによる脳の萎縮は欧米人に比べて約70%遅いことが明らかとなったのです。どのような人種でも加齢に伴って脳はある程度萎縮していくことが想定されますが、今回の結果はその萎縮速度がチマネ族では緩やかであることを示す結果でした。
なぜチマネ族では脳の加齢変化が緩やかなのかという原因について研究者らは、運動、食事などの生活習慣が心血管疾患に対してよいものであり、心血管が健康的状態であることが影響している可能性があると考察しています。正しい生活習慣だけで脳萎縮が抑えられるとはいえないかもしれません。また私たちの生活環境で、チマネ族のような暮らしをすることは不可能ですが、少しでも健康的生活習慣をすることが加齢による脳の変化に対する影響を抑えることができるのではないかと思われます。