医療あれこれ
糖尿病でコロナに罹患しやすいことはない
毎年11月14日はWHO(世界保健機関)により定められた世界糖尿病デーです。この日はインスリンを発見したバンティング(参照: 医療の歴史26インスリンの発見 ←クリックしてご覧下さい)の誕生日にあたります。日本では糖尿病の医療に関わる専門家で構成される日本糖尿病学会、および医療関係者に加えて糖尿病患者とその家族も加わった日本糖尿病協会の二つの団体が合同の世界糖尿病デー実行委員会という団体がありますが、この委員会により11月9日から11月15日までの期間は全国糖尿病週間として、全国各地で啓蒙のためのさまざまなイベントが開催されています。
今年は特に新型コロナウイルス感染症の流行が拡がり、糖尿病という慢性疾患患者との関係が注目されており、糖尿病患者への偏見が是正されるべきことが呼びかけられています。つまり多くの人は「糖尿病があるとコロナにかかりやすい」と思っているようですが、しかし実はこれは間違った情報だということをいくつかの研究結果に基づいて指摘しています。
まずアメリカの研究では、コロナ感染者7,162人のうち糖尿病患者は10.9%、中国の研究では2,018人中10.3%でしたが、両国国民全体における糖尿病有病率(アメリカ10.5%および中国10.9%)と大差がなく、「糖尿病があってもコロナにかかりやすいとはいえない」という結果でした。
一方、糖尿病患者がコロナに感染した場合、重症になりやすいのではないかということについては、アメリカのコロナ患者7,162人中の糖尿病患者割合は上述のように10.9%でその経過をみると、入院なしの人は6%、一般病棟への入院は24%、集中治療室への入院は32%で、糖尿病患者ではコロナ感染における重症度が高くなることが判りました。
さらに中国におけるコロナ患者7,337人の致死率をみると、糖尿病がない人の致死率は、2.7%であったのに対して糖尿病があると7.3%と高率になりました。また糖尿病のうちでも血糖値が70~180の糖尿病コントロール良好群の致死率は1.1%に抑えられているのに対して、血糖値が180以上になる糖尿病コントロール不良群の致死率は11.1%という高率になってしまいました。
結果をまとめると次の三つになります。
①糖尿病があってもコロナにかかりやすいことはない。
②糖尿病があると、もしコロナに感染したら重症化しやすい。
③糖尿病の経過がよくない人はコロナ感染したら致死率は高くなる。
結論として、コロナ感染症が重症化しないためには血糖コントロールが重要であることが明らかとなりました。