医療あれこれ
休暇を楽しむとメタボリック症候群を予防
最近日本では就労者の働き方がどうあるべきかが注目されており、残業時間のことや有給休暇を適切にとり心身のリフレッシュをするべきとされています。アメリカにおいてもこのことは同様の問題のようで、フルタイム労働者の多くが有給休暇の権利を持っているのに、完全に行使している者は半数に満たないそうです。こうした有給休暇を取得しづらいという仕事文化は、それだけで労働者の身体的健康に悪影響を及ぼしている可能性があるといいます。これを実際問題として調査する目的で、過去12か月間の総休暇エピソードと総休暇日数がメタボリック症候群とこれに関係する症状にどのように関連するか検討することを目的とした研究論文がアメリカの研究者から公表されました。
(Hruska B et al: Psychol
Health. 2019 Jun 17:1-15. doi: 10.1080/08870446.2019.1628962.)
研究対象はインターネットなどの広報により18歳以上のフルタイム労働者のうち1ヶ月以内に3日以上の有給休暇取得を予定している人から公募されました。ネット情報だけでは有給休暇中に副業をするなどで実際には休暇を楽しんでいない場合も含まれるなど研究目的からはずれることもあるため、各人に研究室まで出向いてもらい、面接により過去12カ月間の休暇中の行動を評価するとともに血液検査などの諸検査が実施されました。研究対象者として選ばれたのは63人で平均年齢約43歳、女性が約70%、白人が94%を占めました。
面接の結果では、過去12カ月間に参加者は約5回の休暇を取得し、約14日間の有給休暇を取得していました。休暇中に何をしていたかというと自宅にいた人と自宅外にいた人の割合は2:3で、休暇中に外出していた人の方が多い結果でした。外出した人は旅行などのエピソードがあり、外出しなくても自宅で育児など仕事以外の事をして積極的に過ごしたという人もある程度の割合を占めたそうです。
統計学的解析でメタボリック症候群との関連をみたところ、調査した12カ月間の休暇日数とメタボリック症候群との有意な関連は認められませんでしたが、休暇中に何をしたかというエピソードの総数とメタボリック症候群指標に有意な関連が認められ、休暇エピソード数が増えるごとにメタボリック症候群のリスクは約4分の1に減少し、有意な改善が認められたという結果が得られました。
これらの結果から、休暇によるメタボリック症候群関連のリスク改善は、休暇日数の多少ではなく、休暇をいかに有意義に過ごすかどうかが重要であることが示されたと考えられます。メタボリック症候群はいうまでもなく心臓・血管疾患発生と関連があり、休暇により心身をリフレッシュすることがこれらの予防に大切であることが改めて証明されたと考えることができます。しかし著者らも述べていることですが、選考条件の関連から十分な数の対象者ではなかったこと、男性より女性が多かったこと、人種的な偏りもあったことなど研究デザインに多少問題もあったと思われ、今後の研究でさらなる厳密な検討が望まれます。