医療あれこれ

果物を食べているとすい臓がんになりにくい

 これまでに野菜や果物はがんの予防効果があることを示す報告がいくつかありました。今回は国立がん研究センターなどの研究グループが、10年以上の長期間にわたって、野菜、果物などの摂取とすい臓がんの発症リスクとの関係を調査し、International J of Cancer (2018926日オンライン版)に発表しました。

 研究対象は、45歳~79歳の日本人男女9万人余りです。138食品を含む摂取頻度調査をおこなったのですが、そのうち17品目の果物と29品目の野菜の摂取量によって対象者を4群にわけて長期間調査しました。

 その結果、中央値16.9年間にすい臓がんと診断された人は577人いたそうです。このうち果物の摂取が多い群は、少ない群に比べてすい臓がんリスクが26%低かったそうです。驚くべきことは、野菜についてでは、野菜摂取量が多い群は、少ない群にくらべて30%高かったといいます。つまり果物を食べるとすい臓がんになりにくいけれど、野菜を食べると逆に膵臓がんになりやすいと考えることができます。

 野菜や果物の種類によっても異なってくると考えられますが、野菜でいうと、アブラナ科の野菜や緑黄色野菜などと限定してみると、すい臓がんリスク発症とは有意の関係はなかったそうです。またその他の生活習慣、例えば喫煙との関係をみると、果物摂取のすい臓がん予防効果は、喫煙者でも果物摂取によりすい臓がん発症リスクは低下しますが、非喫煙者の方がより明らかだったのに対して、野菜については喫煙者において野菜を多く食べている群が明らかにすい臓がん発症リスクは多いのに対して、非喫煙者では、野菜とすい臓がん発生との明らかな関係はみられなかったそうです。

 研究者らは、「果物のすい臓がん予防効果は、果物に含まれるビタミンなどの抗酸化成分が影響しているのではないか。一方、野菜では、タバコに含まれる何らかの成分と野菜の成分に相互作用がある可能性も考えられ、野菜のすい臓がん発症リスク上昇は喫煙が影響しているのではないか。」と述べています。

 日本人を対象とした疫学研究としては、過去最大規模ですが、すい臓がんを発症した人の数は決して多いものではなく、さらなる研究結果の蓄積が必要でしょう。