医療あれこれ
医療の歴史 (1) 医療の始まり
医療、つまり病気やけがの人を手当することは人類の歴史の中でいつから始まったのでしょうか。原始時代から、病気やけがで苦しんでいる人がいれば、まともな医療ができなくても、何とかその人を何とか助けたい、あるいは少しでも楽にしてあげたいと周りの人は思うでしょう。それが医療の始まりです。そうすると「医療はいつから始まったのか」という疑問は、「人間の病気はいつ頃から発生してきたのか」と同じことになります。その答えは、今から約300万年前、人類の誕生と同時だったのです。このことは多くの考古学的発掘調査でも示されています。例えば、ピテカントロプスという原始人の骨には、結核という病気が悪くなって膿を持った塊の跡が証明されています。
旧石器時代、人間の主な死因は「自然の猛威」と「暴力的行為」でした。時代は下って新石器時代になると、人間は農耕生活を始めるようになり、集落を作って集団生活するようになりました。するとその集団のなかに疫病が流行することもたびたびあったことでしょう。人間はこのような疫病は、神々の仕業に違いないと考えるようになり、神官が「祈とう」して何とか疫病を抑えようとしました。これが今の内科の始まりです。つまり内科医の祖先は「祈とう師」ということになります。後で述べますが、外科医の祖先は刃物を使って外傷の治療をしたことから古代の「散髪屋さん」でした。おなじ医師でも内科医と外科医の祖先は違うのです。
さて記録に残る医療ということになると、紀元前2000年ごろのメソポタミア文明の遺跡には、粘土板医書がありこれは最古の医学書といわれています。さらに紀元前1700年ごろのエジプトには古代の紙パピルスに医術の教科書と思われるものが残されています。人名として医師が登場するのは紀元前1200年、ギリシア時代のアスクレピオスです。アスクレピオスはギリシア各地にお籠もり治療をおこなう保養所を作りました。ギリシア神話では彼はどんどん病気の人を治して、最後には死んだ人まで生き返らせたため、神の怒りにふれゼウスに殺されてしまったとなっています。