医療あれこれ

インド株は日本人のファクターXから逃れる?

 「ファクターX」は、iPS細胞の開発でノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授が名付けたことばです。新型コロナウイルス感染で死亡した人の数が欧米に比べて日本ではけた違いに少ないのには何らかの原因があるはずで、その不明な要素を「ファクターX」と呼んだのです。その実態の詳細は明らかではありませんが昨年来、日本ではマスク着用率が高いことや握手やハグをする習慣が少ないこととか、日本人の遺伝的背景、また日本では結核感染予防のためにBCG接種がおこなわれこれがコロナ予防に有効などと様々な説が考えられてきました。何にせよこれまでファクターXは日本人をコロナ感染から守ってきたのです。

 また日本のみならず、台湾やシンガポールなどは新型コロナに打ち勝って感染者を抑制してきたこともあり、この「ファクターX」は欧米人にはないアジア人が共通して持つコロナ感染の抑止力の要因ではないかと推察されてきました。しかし直近の台湾やシンガポールにおいて再びコロナ感染がまん延してきたという現実から、「ファクターX」は万能のコロナ抑止要因ではないという歓迎されない想像がなされるようになってきました。さらに「ファクターX」などと期待を込めた都合の良いコロナ阻止要因が想定されていましたが、このような要因はそもそも存在しないのではないかという意見も考えられています

 決定的なことは「ファクターX」の効果は最初に感染が始まった従来株のウイルスに対してのものだったのではないかということです。英国株やインド株など新たな変異コロナウイルスが従来株に置き換わってきた現在、これまでと同様にはいかないといった危惧があります。インド株は多くの日本人がもつ免疫系から逃れる威力があり感染がおこりやすいともいわれます。しかし不安要因だけではありません。コロナ・インド株は感染しても死亡率は高くないという意見もあります。

 今私たちにできることは今更いうまでもありませんが、粛々と感染予防策を励行しワクチン接種による効果を期待することと思います。