医療あれこれ

トルコ・シリア大地震

 さる26日、トルコ・シリア国境付近で発生した大地震では建物の倒壊が多数発生し、2カ国の合計で213日時点において35000人以上の死亡が確認されており、今後も増加すると見込まれています。日本を始めとした各国からの支援がおこなわれていますが、政治的な紛争から支援物資の搬入を初めてとして通常以上の問題点があるようです。

 倒壊した建物の下敷きとなった人々を救出する作業が、地震発生から1週間以上経った現時点でも続けられています。今回の話題は、こうした倒壊家屋からの救出は72時間でないと生存率が急激に低下するというマスコミ報道の情報は本当なのかということです。この情報の根拠はこれまでの大地震発生後、救出された人々における生存率の推移から想定されたものです。しかし今回の経過をみると、72時間を過ぎても報道でみる限り元気で救出されてくる映像が多くみられ本当なのかと思いたくなりますね。

 

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グラフに示したのは日本で1995117日に発生し、家屋倒壊などで6434名の死者数となった阪神淡路大震災の地震発生からの救出された人数と生存率の推移を示したものです。これをみると地震発生から72時間となる120日には救出された人数に比べてその後の生存率が急激に低下していることが判ります。このような地震発生からの推移から72時間というデータが推測されているのでしょう。アメリカなどでも地震発生から3日後=72時間後から生存率が低下することが採用されているそうです。

 しかし72時間を過ぎれば生存率が低下するというデータを示しているだけであって、72時間以後は絶望的であるとしているわけではありません。どうもマスコミ報道は72時間が限界であるかのように強調されているように思えます。今回の報道でもあるように地震発生から1週間以上経過しても救出されている高齢者や子供がいることを考える必要があると思われます。

 また医療的には長期間にわたって体を圧迫されていた人が救出されたのち、数日後に急性腎不全で死亡するクラッシュ・シンドロームという病態があることを考慮する必要があります。これを抑止するためには救出後、人工透析などの医療が適切におこなわれる必要があります。被災地では病院施設も多く倒壊しているという報道もあり心配になるところです。