医療あれこれ
クジラにも加齢による認知症がある
大阪湾の淀川河口にクジラが迷い込んでいるという1月9日のニュースをご覧になった方もいると思います。このクジラはマッコウクジラで体長は15mの大きさです。SNSで「よどちゃん」と愛称がつけられ大勢の人が見物に訪れていました。初めは尾ひれを動かしたり潮を吹いたりしていましたが、11日には動かなくなり13日に死亡が確認されました。大阪市はこの死骸を沖合に移動させて深海に沈める方針で18日から作業を開始する予定だそうです。そのままの状態で放置しておくとクジラの体内にガスが充満して爆発する危険もあるそうです。同じように浅瀬に迷い込んだクジラがいたというニュースは日本では2009年に和歌山県田辺市の内之浦の浅瀬に打ち上げられたクジラがいたと報道されていたそうです。この田辺市のクジラもだんだん弱ってきて死亡すると考えられ沖合に曳航して沈めようと計画されていたところが、その後急に元気になり自力で湾外にでてどこかへ行ってしまったとのことでした。メデタシメデタシの結果でしたね。
今回の話題は海外のことですが、英国の沿岸の浅瀬には定期的にクジラやイルカが迷い込んできて浅瀬に座礁するのだそうです。この原因を解明するためにクジラの脳を解剖して調べた研究者たちがいました。英国グラスゴー大学のマーク・ダグレイッシュ博士らで、共同研究者の一人であるセント・アンドリュース大学生物学部のフランク・ガン・ムーア氏はかねてより認知症になるのは人間だけなのかという疑問を持っていたそうです。そこでこの座礁したクジラたちの脳を解剖して調べることにしたのです。浅瀬に迷い込んだクジラやイルカ22頭のうち18頭は高齢だったということも彼らの興味をひいたのでしょう。その結果、高齢のクジラ(ハクジラ類:大阪のマッコウクジラもその一種です)3頭の脳からアミロイドβというタウタンパクが認められ神経原線維変化など人間のアルツハイマー病と同様の変化があったそうです。
この研究結果は学術雑誌European Journal of
Neuroscience 12月13日号に掲載されました。フランク・ガン・ムーア氏は「これで認知症になるのは人間だけではないことが明らかとなった」と述べています。しかし人間のアルツハイマー病と類似した脳内病変がクジラの座礁の原因になったのかどうかは今後のさらなる研究が必要だとも言われています。