医療あれこれ
鉄欠乏性貧血の食事療法は?
ヘモグロビンが不足して発症するのが貧血です。一般的によく知られている鉄分が不足しておこる鉄欠乏性貧血の他に、貧血には赤血球の製造工場である骨髄における赤血球生成が低下しておこる再生不良性貧血、ビタミンB12などが欠乏しておこる巨赤芽球性貧血、さらに血液中で赤血球が壊されておこる溶血性貧血などさまざまな種類の貧血があります。しかしこれらのうち最も発生頻度が高いのが鉄欠乏性貧血です。鉄は骨髄でヘモグロビンが合成されるために必要なので、鉄不足は直接ヘモグロビンが低下して赤血球のサイズが小さい貧血が発生します。
慢性的に鉄が不足する原因としてよくみられるのは、持続して慢性的な出血が持続することです。出血により失われたヘモグロビンを補充するため合成が増加しますが、鉄分は次第に欠乏してきます。明らかな病気がなくても閉経前の女性では毎月の生理出血があり、鉄分は不足しやすいと考えられます。男性に比べて女性の方が血液検査でのヘモグロビン正常値は低く設定されているのはこのためです。女性ではさらに妊娠、出産、授乳などにより鉄の必要量が増加し鉄欠乏性貧血が発生しやすくなります。
鉄欠乏性貧血の治療としては、不足している鉄分を内服薬で補充することがおこなわれます。一方、食事から摂取される鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血になる可能性があるのではないかと考えることができますが、菜食主義者など極端な偏食がなければ食事で鉄分が不足するとは考えられません。よく「貧血があると鉄分を多くとることが必要なので、レバーや緑黄色野菜を食べましょう」などといわれます。しかし鉄分不足のある人が食事でこれをおぎなうことは困難です。日本人の普通の食事にははじめから十分な鉄分が含まれていますので、普通の食事を規則正しく食べることを心がければよいと思います。