医療あれこれ

ダニが媒介する重症ウイルス感染症

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 夏から秋にかけてキャンプやハイキングなど郊外でのレジャーにおいて虫などの刺傷などによる健康障害がみられます。なかでもダニの一種であるマダニが媒介するウイルス感染症には一部に重症化するものも含まれます。

 マダニによる感染症でももし発症したとしても多くは細菌感染症であり抗菌薬が有効であり、対処可能ですが、ウイルス感染症である重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はその病名通り重症化し、また抗菌薬は無効ですから注意を要します。これまでSFTSの原因となるマダニは西日本に多く存在するとされていましたが、最近では北海道も含め日本全国に広く分布しているといいます。、また山間部や山林地帯だけではなく、都市部の公園や河川近くなどでも発見され、犬との散歩などで普通に感染することもあるようです。

 日本でSFTS2013年に初めて確認され、現在までで年間60100例の報告がなされています。重症化すると死亡率が20%といわれ注意が必要です。症状としてはマダニに刺されて614日の潜伏期のあと、38℃以上の高熱とともに、嘔吐、下痢などの消化器症状、頭痛、筋肉痛が出現します。血液検査として著明な白血球減少と血小板減少などを認めることが病名の由来となっています。皮膚に吸着した状態のマダニが見つかる事例はきわめて少ないようです。

 たとえ皮膚に吸着したマダニを発見したとしても、原因ウイルスを保有している確率は低く、念のため、しばらくは急な発熱や腹痛・下痢、発疹などに注意するようにして、体調の変化がなければ心配は不要と考えられています。

(引用:夏秋優 マダニ刺症 M3臨床ニュース 2022817日)