医療あれこれ
人間の体は何度までの気温に耐えられるのか
梅雨が明けて真夏になっていないのに、所によっては気温が30℃以上の真夏日はおろか35℃以上と猛暑日となる可能性がある予報が出されるなど日本各地の激しい気温上昇が心配されています。
この季節にはいうまでもなく熱中症になる危険があるため、エアコン・クーラーを適切に使用して気温をコントロールするとともに、おなじみの言葉である「こまめな水分補給」が呼びかけられています。知らないうちに発汗により体内の水分が失われこれを抑止するためにはのどが渇いていなくても早めの水分補給が重要です。これもご存じのことと思いますが、水分といってもコーヒーや緑茶にはカフェインが多く含まれ、この利尿作用により適切な水分補給にはなりません。さらにアルコールにも強い利尿作用がありますから、ビールを多量に飲んでも水分補給にはならないことはよくご存じのとおりです。
ところで人間の体はどれ位の気温上昇に耐えられるのでしょうか。人間の体温は体温計を用いて脇の下で測定すると約37℃ですが外気温が上昇するとそれに連れて上昇します。体温が42℃になると体を構成するタンパク質の細胞が障害を受け始め、筋肉のかたまりである心臓の変調から心臓発作の危険状態となります。さらに50℃以上では全身の細胞が死滅してしまうとされています。
ここまで至らない外気温の上昇はどれ位なのかというと、例えばサウナの内部温度は90℃程度ですからこの程度なら体は大丈夫なのだろうと考えられますが、90℃の状態で10分以上入っていられる場合はあまりないだろうと想像されます。実験的に高温状態に人間をおいた例があるそうですが、この場合は127℃で20分が限界だったといいます。この限界状態では生卵は固ゆでのゆで卵となり、生肉はカリカリの焼肉になったそうです。
生卵や生肉とちがって人間の体がなぜ耐えられたのかというと、汗をかくからです。汗が蒸発することによって体温は下げられ、127℃に耐えることができたのです。体の表面で汗が蒸発することにより温度がさげられ、毛細血管を流れる血液が体の深部の血液循環の温度が下がることになります。このためには汗をかくだけではなく効率よく蒸発させることが必要で、湿度はできるだけ低く保たれることが必要です。日本の夏は湿度が高いので風による汗の蒸発が有効です。扇子やウチワ、最近では携帯扇風機が流行っていますが、有効な道具です。
(数から科学を読む研究会:あっと驚く科学の数字、講談社)