医療あれこれ

アメリカ人の身体活動量は年々減少している?

 この2世紀のあいだに、技術革新や社会的変化により現代人の身体活動量は明らかに低下していることが想定されます。例えば現代人は仕事に行くとき歩かずに電車、バスや車に乗り、労働作業も人の肉体的活動に代わって機械が自動でするなど昔に比べ明らかに日常生活動作での身体活動量は減少しています。しかしこの減少量は具体的にどの程度なのか詳細は不明でしたが、このたびアメリカのハーバード大学ヒト進化生物学分野のA. Legian氏らの研究で明らかにされました。(Yegian A et al. Current Biology 2021, 31, R1375-R1376

この研究の基礎となったのは昨年アメリカのスタンフォード大学の研究チームにより公表された1862年から2017年にかけて収集されたアメリカ人の平均体温のデータです。1990年生まれの男性の体温は1800年代生まれの男性より約0.59℃低く、女性でも0.32℃低いというものです。

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(図参照: Nature 2020-01-14 doi: 10.1038/d41586-020-00074-9

 体温は体の中でおこっている物質の化学変化と代謝(エネルギーへの変換)により発生した熱と考えられることから、体温の変化は体の活動量の変化としてとらえることができます。このことから現代人の身体活動量が200年前の人々と比べてどのように変化したかを推測できるというものです。その結果、アメリカ人の安静時の代謝量は約6%低下したことが明らかになったとLegian氏は述べています。身体活動量の変化により健康度が左右されるとすると、身体活動量の低下は現代人の糖尿病や心臓疾患などの罹患率が上昇することも考えられ健康増進の対策に役立つと考えられます。