医療あれこれ

ビールのにがみが認知症を予防

 ビールにはホップという成分が含まれており、このうちの苦み成分が認知症を予防する効果があることがキリンビールの中央研究所 阿野泰久先生により公表されています。                        

 ビールに含まれるホップはビールのにがみや香り、泡を保ち、ビールの保存性を高めていますが、ビールの製造工程でホップに含まれるα酸がイソα酸という成分に変化してより強い苦みをもつようになります。このイソα酸の含有量の違いが多くの種類があるビールの風味の違いとなって表れるのだそうで、ノンアルコールビールにもイソα酸は含まれています。

 このイソα酸は代表的なアルツハイマー病にみられるβアミロイドを貪食してその結果、アルツハイマー病を予防する効果があるのではないかと考えられています。イソα酸には試験管内の実験でアミロイドβを抑制する作用があり、さらに生体内では脳内の免疫を担当し異物を貪食しているミクログリアを活性化しアミロイドβを除去するというのです。アミロイドβ蓄積がみられる、つまり実験動物におけるアルツハイマー病モデルのマウスにこのイソα酸を投与するとアミロイドβ沈着が抑制されることが確認され、さらにこのマウスの認知機能を実験的に調べると改善がみられることが明らかとなりました。

 イソα酸は強い苦みがあり人に投与するとき例えば内服薬のように服用を続けることは難しいのですが、苦みを抑制した熟成ホップ苦味酸という物質が作られました。この熟成ホップ苦味酸をマウスに投与したところ、イソα酸と同じように認知機能改善が認められたことから、これを実際に人に投与して検討されました。少し物忘れがあるという45歳~64歳の30人に熟成ホップ苦味酸を投与すると、物忘れは改善され注意力がよくなったという効果がみられるという結果が得られたそうです。

 これらの結果からビールを飲むと認知症の抑制になるというのでが、アルコールを飲みすぎるという問題もあります。しかしノンアルコールビールにはこのアルコール問題はなく、しかも上述のようにイソα酸の認知症抑制があるので、通常の飲み物としてノンアルコールビールを選べばよいのではないかと阿野先生は述べています。

(ご興味のある方は動画がアップされていますのでyoutubeのホームページで、「ビールの苦味で認知症予防」と検索して動画をご覧下さい。)