医療あれこれ
コロナワクチン、異種混合でも大丈夫か
新型コロナウイルス感染を予防するためのワクチン接種が進められています。オリンピック開催までに必要なほぼすべての人に接種を完了するということはほぼ不可能となりましたが、もともと副反応が心配で、ワクチン接種を希望しない人も特に若年世代を中心に10%ほどいるといった問題もあります。また予定していたワクチンが届けられないなど、ワクチンの不足が報道されており困難を極めています。
現在日本で使用されているワクチンにはファイザー社製商品名コミナティおよびモデルナ社製COVID-19ワクチン・モデルナという2種類があり、今後主としてどちらを用いて予防接種していくのかが問題となります。ご存じのようにワクチン接種は2回接種が必要ですが、当初は1回目と2回目は同じワクチンを用いるとされていました。しかし先日、担当の河野太郎大臣は1回目、2回目で異なるワクチンの接種を容認すると発表しわずかに混乱が見られます。
ファイザー社製およびモデルナ社製のワクチンはともにメッセンジャーRNAワクチンで、両社とも95%の有効性があると公表されていますが、ファイザー社製は12歳以上、モデルナ社製は18歳以上の接種が認められ、ファイザー社製は3週間の間隔をあけて2回目を接種としているのに対して、モデルナ社製は4週間の間隔が必要であるなどの相違があります。さらに両者で保管方法が異なり、何より問題なのはファイザー社製は使用前に生理食塩水で希釈する必要があるのに対してモデルナ社製は希釈する必要がないなどの取り扱いの相違があります。これまでの経緯でもファイザー社製を誤って希釈しない原液のまま接種してしまった、あるいは希釈用の生理食塩水だけを注射してしまったなどの事例が報告されています。つまりファイザー社製よりモデルナ社製の方が取り扱いが簡単だといえるでしょうか。その意味では現在進められている大規模集団接種ではモデルナ社製ワクチンが使用され、多数の受診者への対応に適していると思われます。
そこで知りたいことは、2種類のワクチンを混合して、つまり1回目と2回目で異なるワクチンを用いても大丈夫なのかという点です。これについて先日、世界的に権威ある雑誌であるランセットに混合しても効果が損なわれることはないという論文が公表されました。
(Borobia AM, Lancet 2021 Jun 25, online,
doi: 10.1016/SO140-6736(21)0140-3.)
この内容は、2種ワクチンを混合して用いても、これまでのように1種類に限定した群と比べてコロナウイルスに対する抑制効果(中和抗体の増加)は同等であることや、副反応も特に有意な差はないこと、また混合による重篤な有害事象はなかったというものでした。以後あえて混合接種にする必要はないでしょうが、一つの選択肢になりうると考えられます。