医療あれこれ
コロナワクチンは2回接種が必要か?
ようやく新型コロナウイルス感染症予防のためのワクチン接種が日本でも進められてきておりますが、世界の中で日本の接種完了率は依然として低いままであることはご存じのとおりです。この接種率もそうですが、どうしても知りたいデータは、現在日本で接種が進められているファイザー社製のワクチンの2回接種が本当に有効なのかどうかということでしょう。
そこで注目すべき調査結果として、世界で最もワクチン接種が進んでいるイスラエルにおいて実施された全国規模のワクチン有効率調査研究の結果があります。イスラエルでは世界にさきがけワクチン接種が進められており、用いられているワクチンは現在日本で使用されているファイザー社製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンです。このワクチンの有効性はいくつかの臨床研究で有効であると推定されているものの、実際の接種において実施されているように2回接種した時の有効性を全国レベルの大規模な臨床試験の結果ではありませんでした。今回2021年1月24日〜4月3日の期間中にコロナ感染したイスラエルの人約654万人を対象として、無症候性の感染、症候性の感染で入院なしの人、入院した人、重症化した人、死亡してしまった人の各群でワクチン接種がなかった人の群との比較から有効性の差について検討されました。
その結果、通常通り2回接種を済ませた人の群ではワクチンなしの人に比べて、無症候性感染を91.5%、症候性感染を97.0%、入院を97.2%、重症化を97.2%、死亡を96.7%それぞれ抑制したそうです。85歳以上の高齢者においても感染予防効果は94.1%、入院抑制効果は96.9%、死亡抑制効果についても97%の有効性が認められたといいます。さらに16~44歳の年齢層では100%死亡を抑制するという効果がありました。
このような臨床研究では、対象者の数が多ければ多いほどその結果が信頼できるものです。イスラエルの報告は全国的な相当規模の今までになかった大規模臨床試験といえます。この結果から現在日本で用いられているファイザー社製ワクチンは2回接種を受けることにより優れた有効性があることが確かめられました。ここで、2回接種ではなく1回接種ではだめなのかという疑問に対する答えを出すための臨床研究は、ワクチン接種が2回と決められているにも関わらず、比較して実験データを作るためだけに無理やり1回しか接種しない大勢の人たちの群をつくり同様の大規模試験をする必要があります。いうまでもなくこれは倫理的に問題のある人体実験になりますので、実施はできないことを理解する必要があります。
いずれにせよ可能な限り取り決められているように2回接種を受けコロナ感染を有効に予防することをおすすめします。
文献: Lancet(2021年5月5日オンライン版)