医療あれこれ
外科手術の技能を競うコンテスト
外科医にとって手術療法はその分野の最も重要なものであることはいうまでもなく、手術の技能が優れているか否かは外科医の評価の大きな部分となります。医学・医療以外で、例えば限られた時間で料理を作って料理人の技を競う料理コンテストなどはよくおこなわれていますが、傷病をもつ人を治療するための技能コンテストは通常ではあまりありません。医療の技術を評価するコンテストのようなものがあってもよいのでしょうが、広く一般の医療者を対象としたその技能を競うものは大学の医学部、病院単位など限られた集団内でおこなわれることがほとんどです。しかし多くの外科系医師にとって、自分の手術的技能は同じ施設に属する上司にあたる上級医以外に客観的に評価されることは多くなく、これまでに若手医師による心臓血管外科手術の技能コンテストがあっただけでした。
その中でまさにその外科手術の技能を競うコンテストが今年の9月に横浜で開催された第29回脳神経外科手術と機器学会のプログラムの中で開催されました。脳神経外科の手術は多くは術者が顕微鏡を通して手術部位を観察しながら治療を進める顕微鏡手術が多くを占めます。脳神経外科手術では微細な血管を素早く縫合する高度な技術要求されるもので、今回のコンテストの課題も直径1㎜の人工血管を5分間で縦切開して縫合するというものでした。これは日常に脳神経外科医がおこなっている技術で、通常とはかけ離れた高度な技術が要求されるものではないそうです。
コンテスト参加者は2010年以降に医学部を卒業した若手医師で、コロナ禍の中開催された学会でしたが18名の参加者があり、異なる大学、病院から選ばれた5名の専門医により評価されました。評価の基準は、術者の姿勢、顕微鏡の操作、手の震え、切り口のきれいさ、針を持つ角度などでした。
主催者らは、このような企画が、若手医師らのモチベーションを向上させ、一人前の脳神経外科医になるための多くの教育を受ける機会と実力を示すチャンスになると述べています。