医療あれこれ
イグノーベル賞と医学・医療
医学・医療について日本人の業績で、ノーベル生理学・医学賞の受賞者はiPS細胞の山中伸弥先生やガン免疫療法の本庶佑先生を始めとしてとして幾多の日本人研究者名が思い当たりますね。
ノーベル賞に対して今回の話題であるイグノーベル賞は、ノーベル賞のパロディーとしてノーベル賞にちなんだ冗談的な賞で、人々を笑わせ、考えさせてくれる業を表彰するものです。ノーベル賞のように医学賞、化学賞、物理学賞などオーソドックスな部門もあれば、歯科学賞、心理学賞、美術賞、天文学賞、公衆衛生賞など多種多様な部門がその都度追加され、毎年10項目の表彰がおこなわれます。授賞式もノーベル賞がスウェーデン王室に敬意を張らあった儀式であるのに対して、イグノーベル賞はスウェーデンの郷土料理ミートボールに敬意が払われます。受賞スピーチでは観衆から笑いをとることが義務付けられているそうです。
研究テーマは半分冗談のようなものもありますがそれは名前だけであって、普段は人々があまり関心を持たないけれど、人間の生活において大切な事柄なども含まれています。例えば、2年前に日本人医師がイグノーベル医学教育賞を受賞した研究テーマは、大腸カメラを実施するとき、内視鏡が肛門から大腸の中へ挿入される痛みを軽減するため、座った姿勢で、自分自身で大腸カメラを挿入すると痛くないというテーマの発表がありました。研究者がステージ上で、肛門から内視鏡を挿入する場面を説明するというくだりは、ほとんどコントのようにも思われます。しかしこれを研究した堀内朗先生は消化器疾患・内視鏡医療が専門で、どうすれば受診者の検査の苦痛を減らすことができて、内視鏡検査がさらに普及するかを研究されています。
イグノーベル賞はこのところ毎年のように多くの日本人が受賞しています。そのうちでも誰でも知っている受賞のテーマは、(直接の医療からは離れますが)2004年に平和賞を受賞した井上大祐さんのカラオケを広く普及させたことでしょうか。オーケストラやバンド演奏なしに歌の伴奏が流れて歌う人が自由に楽しめることから空のオーケストラということで、はじめは業界用語でカラオケと言われだしたのですが、今や世界中で"KARAOKE"として親しまれています。日本ではカラオケボックスが普及しており、一人カラオケなども自由にできますが、イグノーベル賞の受賞理由は「人の(下手な)歌を聴いても苦痛に耐えるように寛容になる手段を提供した」というものだそうです。
今現在は三蜜になるので楽しめませんが、自由な生活が可能になったら高齢者などのサークルでカラオケを楽しんで、仲間とのコミュニケーションを図るのは精神衛生上も大変良いことですね。