医療あれこれ

睡眠不足が脳に対する影響は予想外に重大

 睡眠不足は脳の機能にさまざまな影響を及ぼす事が知られています。この項でもこれまでに、睡眠不足は昼間の眠気を誘発し、よく昼寝をするようになるなどの症状が現れてきますが認知症発症に悪影響があることをご紹介してきました。

  2018429日付「睡眠不足で認知症になる」

 20181028日付「昼間の眠気はアルツハイマー病の徴候」

 今回ご紹介するのは、アメリカのミシガン州立大学の研究者らにより公表された文献によると、睡眠不足により日常生活上の注意力が低下するという単純な症状だけでなく、いくつかの手順を必要とする複雑な脳機能も影響を受けるというものです。

  Stepan, M. E.et al: Journal of Experimental Psychology: General. Advance online publication. https://doi.org/10.1037/xge0000717

  合計138人の研究協力者を一晩中眠らずに起きていてもらった人77名と、自宅で普通に生活し睡眠をとった人61名について、光に反応する時間を測定する注意力テスト実験、および作業を途中で中断した後に最後まで作業できるかどうかをみるより複雑な対応を必要とする「プレースキーピング」能力を評価しました。それぞれ実験当日の夕方と翌日の朝の2回テストして変化を観察したのです。

その結果、睡眠不足状態のグループでは不注意による作業ミスが起こる確率は当日に比べて翌日には3倍に上昇し、プレースキーピングエラーも2倍に上昇しました。しかし普通に睡眠をとったグループではこうした変化はなかったそうです。

 これまで、睡眠不足により注意力が散漫となるなどの脳の機能が影響を受けることが知られていましたが、今回の結果のように、睡眠不足によってより複雑なプレースキーピング能力も影響を受ける事がわかりました。自動車運転など複雑な手順を必要とする作業も影響を受けることが実験データとして示されたわけです。正常な脳機能の維持には睡眠不足は絶対避けるべきことでしょう。