医療あれこれ
空腹になるとものごとの判断を誤る?
大脳の栄養に大切な血液中の糖分が減ると正しい考えができないかも知れません。つまりお腹が減っていると、少し我慢すれば豪華なごちそうが提供されるのに、目の前のわずかな食料に手を出してしまう可能性があります。このほどイギリスの研究者らは、他の人から何らかの報酬を受け取るときに空腹であったら、その受け取る報酬が得になるのかどうかの判断が正しくできるのかについて調べ、その結果を公表しました。
(Psychon Bull Rev. 2019 Sep 13. doi: 10.3758/s13423-019-01655-0.)
研究はイギリスのDundee大学のJordan Skrynka氏らによっておこなわれました。50人の大学生(女性28人、男性22人)について、調査前に10時間にわたって絶食させた空腹状態の場合と、調査前2時間以内に食事を摂った二つの状態の相違についてどちらがその時に得る報酬について正しく判断できるかを調べたのです。報酬とはチョコレートを手に入れるか、金銭を得るか、あるいはよい音楽を聴くことができるかの3項目です。少し先になるけれど倍の量に増やした報酬が提供されることを選ぶのか、いま得られる割り引かれた報酬を選ぶのかについて測定しました。
結果は、報酬がチョコレートの場合、それを手に入れるまでの期間は、食事した状態では倍の量のチョコレートが手に入るのであれば平均35日間待つ方が得と判断したのに対して空腹状態の判断では3日しか待てないというものでした。これは実際に空腹を満たすものですが、金銭という報酬が得られるとなると、普通なら平均90.3日待てるものが空腹では40.2日しか我慢できない。また音楽を手に入れるという報酬では39.7日が空腹では12.4日に短縮してしまうというものでした。
結果についての考察で研究者らは、最も明らかなのは空腹時においてすぐに食物を得る希望が明らかに大きいことは理解できるものだが、食物以外の報酬でも空腹によりその価値が正しく判断されていない可能性があるのではないか。さらに投資とか健康状態のようにその場での判断が要求されるときには空腹状態であることを避けるべきだ、といったコメントがなされています。「腹が減っては戦はできない」ことを実際に示した研究結果と言えるでしょうか。