医療あれこれ

虫垂の手術したらパーキンソン病にならない?

 パーキンソン病は、以前にこの項でもご紹介したように、手指が細かく振るえたり(振戦)、関節や筋肉が固く動きにくくなり動作が少なくなる症状ですが、その原因は脳内のドパミンという神経ホルモン分泌が低下することためにおこります(2015412日付医療あれこれ)。つまり脳の病気です。それが、病気の始まりは、盲腸の下に存在する虫垂である、という本当?と思ってしまうような論文が公表されました。

(BRYAN A. Killinger BA et al: Science Translational Medicine  31 Oct 2018: Vol. 10, Issue 465, eaar5280 DOI: 10.1126/scitranslmed.aar5280)

 たしかに虫垂は、付属的に存在する行き止まりの臓器で、不要なものと言われていますが、一部には、パーキンソン病に関連するタンパク質(αシヌクレイン)が蓄積している部位であるともみられています。

 著者らは、スウェーデンとアメリカの患者データを調査研究し、若いうちに虫垂炎の治療のため虫垂切除手術を受けた人のパーキンソン病発症が、切除術を受けていない人よりも19%低いことを認めたそうです。これをスウェーデンの農村部の人に限ってみると、パーキンソン病のリスクはさらに25%も低いことがわかったといいます。また著者の一人は、パーキンソン病を発症した人でみても、虫垂切除していると発症年齢が平均で3.6年遅かったと述べています。

 理論的に、虫垂とパーキンソン病の関連がこれまでにも言われていたことなので、全く理解できないわけでもないのですが、思わず、本当なの?と思ってしまうのは事実ですね。これでいくと、虫垂炎の治療として、軽症であれば抗生物質投与で治療することも多い虫垂炎ですが、できるだけ手術して切除してもらった方がよいのでしょうか。そういえば、前回のパーキンソン病についての話題も、偽薬でパーキンソン病がよくなる、というものでした。何か不思議な病気で、早くすべてのことが明らかになるよう期待します。