医療あれこれ
睡眠リズムの乱れは病気のもと
以前にこの項でもご紹介しましたが、人の体内には一日の生活リズムをコントロールしている体内時計があります。地球が一回自転する24時間とほぼ同じ時間で規則正しい日常生活が保たれていると人の体は良好な状態を保つことができます。この体内時計が刻む規則正しい生活リズムを概日リズムといいます。もしこのリズムが乱れるとさまざまな病気の原因ができ上ってきます。
一番判りやすい例が糖尿病です。昼間には人はさまざまな生活活動をしていますから、エネルギーが消費されるので3回の食事によりこのエネルギーを補っています。一方、夜になると睡眠をとる時間となりエネルギーは貯蓄されています。しかしこのリズムが狂うと肥満や糖尿病になる要因が生まれてくるのです。夜食や寝る直前の食事は太るといわれますが、過剰にエネルギーが蓄積されることが原因です。これは単純に考えると人の概日リズムが乱されていることによるのです。この乱れた生活は糖尿病だけではなく、ガンなどの悪性疾患や動脈硬化性疾患など様々な病気の原因となることが指摘されています。
普段の生活では十分な睡眠時間がとれないから、これを補うため週末にはできるだけ寝るようにするという「寝だめ」をしているという人がいます。しかしこのことは週末に自ら概日リズムを狂わせていることになり、あまりお勧めすることができません。現代生活においては、夜勤など仕事の都合で元来ある正常な人の概日リズムが維持できない場合も多いことは残念なことです。仕事ならばしかたがないという面もあるでしょうが、若い人で夜更かしすることが習慣になっている場合も多く、また寝る直前までスマートフォンの画面をみていると昼夜交代リズムが乱れてきます。これらはぜひ改めるべき乱れた生活習慣といえるでしょう。
体内時計が正しく作動するのは、メラトニンというホルモンの作用です。脳の奥深くにある松果体(しょうかたい)というホルモン生成部位から、夜になるとメラトニンが分泌され人を睡眠へと導きます。逆に日中はこのメラトニン分泌が止まり、人の体は活動的になるのです。不眠症治療薬として、これまでの睡眠導入剤とは異なり、このメラトニン作用をもつ新規の薬剤も使用可能となっています。