医療あれこれ

心房細動に対する電気ショック治療と抗凝固薬

 これまで何度かご紹介しましたが、心房細動は不整脈の一つです。心房が細かく震えている状態なので、左心房の中に血栓が形成され、その血栓が心臓を流れ出して脳の血管を閉塞し脳梗塞がおこる原因になります。従って心房細動の治療として、血液を固まりにくくする抗凝固薬の投与が必要になります。(20121228日医療あれこれ:バセドウ病と不整脈←クリックしてご覧下さい)

この心房細動は心臓を動かしている電気刺激が過敏に反応しているため発生するというメカニズムを取り除いて治療することがおこなわれています。電気的除細動といいますが、 簡単にいうと電気ショックで心房の過剰反応を抑制して、心臓の動きを正常のリズムに戻そうというものです。この時に必要なのは、不整脈が治ってしまったら、血栓は発生しないし、脳梗塞の危険もなくなるはずですが、実はこの電気ショック療法の直後ほど血液を固まりにくくする抗凝固薬の投与が必要というのです。なぜなら、不整脈がなくなったときには心臓の収縮力が改善され、心房内に潜んでいた血栓が押し出されて流れ出し、脳梗塞をさらに引き起こしやすくなるとされています。これを予防するため電気ショック治療後3週間は抗凝固薬を続ける必要があります。

 また以前に脳梗塞になったことのある人や、高血圧、糖尿病などの危険因子を持っている人はさらに約1か月間にわたって抗凝固薬の投与をつづけることが推奨されています。

 一方、心房細動治療はこの電気ショックによらなくても、抗不整脈薬の投与で治すこともできますが、この際でも抗不整脈薬と同時に抗凝固薬を併用して投与することが必要であるとされています。

文献:岩崎雄樹、日本医事新報 (2017.2.18) No.4843p.63