医療あれこれ
体内時計~生活リズムの調節
人の体の中には時計があり、一日の生活リズムをコントロールしています。といってももちろん本当に機械の時計がセットされているのではありません。その機能の中心は脳内にあって、時計遺伝子と呼ばれるタンパク質の量が増減することにより、一日の生活リズム(概日リズム)が刻まれています。
体内時計は脳内に存在するだけでなく、体中のいろいろな臓器に存在することも解っています。一日の生活リズムにおいて、食事をすれば消化管が働き、運動すれば筋肉を使うといったように、その人の活動にあわせて体内時計が効率的に働いているのです。
概日リズムの乱れが不眠症の原因にもなります。例えば海外旅行での「時差ぼけ」や夜勤で交代制勤務をしている人の睡眠障害がこれにあたります。
さてこの度、膀胱にある体内時計が、排尿のリズムを調節していることが、京都大学や兵庫医科大学の研究チームにより解明されイギリスの科学雑誌に発表されました。腎臓で作られた尿は袋状の膀胱にたまり、これが一杯に膨らんだとき人は尿意を感じてトイレに行きます。しかし排尿の回数を日中と夜間とで比べると、夜間の排尿は多くなりません。これは体内時計の作用で、昼間は膀胱が縮んで、尿をあまりためないため排尿回数が多いのですが、夜間は膀胱が縮まず尿を多くため、排尿回数が少なくなり十分に睡眠ができるようにしているということです。このリズムが崩れたとき夜尿症(おねしょ)や夜間の頻尿がおこると考えられます。報道によると、研究チームの兵庫医科大学泌尿器科学の兼松准教授は「新しい薬や治療法の開発につなげたい」と話しているそうです。