医療あれこれ

GoToと感染拡大は本当に関係ない?

 新型コロナウイルス感染症で落ち込んだ日本の経済を活性化することを目的に始められたGoToトラベルのキャンペーン。しかし感染が拡大しこのキャンペーンは感染拡大地域について一時停止するということになりました。経済活性化のためのGoToキャンペーンを始めたことの意義は理解できますし、一方で医療崩壊を始めとした危機的状況に陥ってしまう事への対応としてこのGoToを特定の地域に限って一時止めることも当然と思われます。

 ところがテレビ報道などでの政府のコメントでは、「GoToと感染拡大は関係がないのだけれどキャンペーンは一時見直す」と聞いてしまいます。旅行で大勢の人が移動したら感染拡大に悪影響を及ぼすだろうことは疫学調査を見るまでもなく当然のことではないでしょうか。

それでも多くの人はGoToと感染拡大は関係がないと思っている人が多いようです。テレビのトーク番組やバラエティーなどでも過半数の出演者は「GoToと感染は関係ないから、このキャンペーンを一時停止にする必要はない」などとの発言があったりします。政府から「旅客数と感染者数の増加には統計的な因果関係はない」ことが示唆されるような資料が公開されているからでしょうか。

 感染拡大を止めるために自粛生活で家にいればいいのか? GoToで動き回ってほしいのか? いったいどうすればよいのか? ということになってしまいます。感染制御は絶対的使命である一方、経済活性化がどうしても必要というので政府も苦しい立場であることもよく理解できます。しかし少なくともGoToと感染は直接関係なしとは言ってもらいたくないですね。京都大学環境衛生学の西浦博教授もトラベルと感染拡大には因果関係はないというのは適切でないことを述べていらっしゃいます。

「旅行と感染は、キャンペーンに伴う感染者だけを検討してもだめだ。そのキャンペーンによって生じた2次感染者など全感染者中にすれば最初の一部でしかなく、また、直接的に観察することが困難である。キャンペーン利用者の直接的調査だけでなく、キャンペーンに伴う2次感染など、調査可能な結果について総ざらいをした上で詳細に検討することが望ましい。・・・」と。   M3 オピニオン 20201122日)

 また典型的なのが食事中のマスク。つまり会食ではマスクをして静かに向き合い、マスクを外して飲み物を飲んですぐマスクをする。ものを食べるときはマスクを外し噛みながらマスクをする・・・などと実行するには非常に難しいことが要求されるのか。

 それでも私達は冷静にものを考え、慎重にできる限り可能な対応をしていくことが必要です。皆で力を合わせてこの難局を乗り切っていきましょう。