医療あれこれ

ロコモは40歳過ぎから加速して増加する

 ロコモとはロコモティブ・シンドローム(日本語でいうと運動器症候群)の略語で、ずいぶん以前にこの項でもご紹介しましたが、(2012719日医療あれこれ「ロコモティブ・シンドローム」参照)最近は「ロコモ」と略して呼ばれることが多いですが、運動器の障害が原因で寝たきりになり要介護状態になることから特に注目されています。

 ロコモ該当者は高齢者に多いことから、これまでの疫学的研究は高齢者を対象としたものが多くみられました。しかし高齢になってからロコモが発症するのではなく、若い時からリスクのある状態が続いていた結果としてロコモになると考えられることから、若年者とロコモの関連を調べる必要があるとされていました。このたび若年者を含めた幅広い年齢層における調査が、東京大学医学部企画情報部の山田恵子氏らによりおこなわれ、研究論文が公表されています。

 全国各地の公的健康診断受診者20歳~89歳の1444人のうち、要介護認定者、疾患などで移動機能に支障のある人などを除いた8,681人の男女(平均年齢51.6歳、このうち女性は58.5%)を対象として解析されました。ロコモの程度は日本整形外科学会のロコモ度テストに基づいて、①ロコモなし、②ロコモ度1:移動機能の低下が始まっている状態で全体の31.6%、③ロコモ度2:以上機能の低下が進行している状態で5.8%、④ロコモ度3:社会生活に支障をきたしている状態で3.2%でした。

 結果として、年齢については、40歳以上では1歳年齢があがるごとにロコモ度1に比べてロコモ度2、ロコモ度3の順に増加することが判りました。これに対して40歳未満では、ロコモ度1については年齢が1歳あがるごとに増加しましたが、ロコモ度23については上昇傾向はありませんでした。

 性別との関連をみたところ、女性であることがロコモ度13の全てにおいて有意な関連が認められました。つまり女性はロコモに陥りやすいことが判りました。生活習慣病との関連をみても、高血圧や糖尿病ではロコモ度は上昇していくことを示す結果が得られました。

 一方、身体活動習慣をみると、ロコモ度1に対して月に数回程度の運動をすると、ほとんどしない人に比べて低下する、つまりわずかな時間でも運動をするとロコモになる可能性が低下することを示す結果でした。

 これらの結果は特に女性において40歳以上になるとあらゆるレベルでロコモになりやすいことが示され、運動習慣などを含めた健康的に歳をとることが必要であり、これは若年世代を含めた啓発が必要であると考えられました。