医療あれこれ

血液と血管(8) アスピリンが大腸がんを予防

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 前回のこのシリーズで、アスピリンは血栓症の再発予防には効果があるけれど、血栓症をおこしていない人が予防的にアスピリンを服用していても、出血のリスクの方が大きいことを説明しました。予防薬としてのアスピリンに関しては、心臓血管疾患に対する効果よりも、最近は大腸がん予防が注目されています。

 最初にアスピリンの大腸がん予防効果は、1988年オーストラリアで66万人を対象とした臨床研究でした。ここで別の目的でアスピリンを長期間服用していた人の大腸がん発症リスクは、服用していなかった人に比べて4割低いという結果が示されたのでした。その後、多くの大規模研究結果が集積され、大腸がん予防薬としてアスピリンは海外だけではなく日本においても実証されるに至っています。ただ出血の副作用などを考えると、すべての人が予防的にアスピリンを服用することを推奨するのは現実的ではありません。現在このことに対する解決策を検討する大規模研究が進められているところのようです。

 かつて、鎮痛薬として使用されていたアスピリンは、1970年代に血小板機能を抑制する作用から抗血栓薬に生まれ変わりました。そして現在、アスピリンはがん予防薬として新たな病気に対する役割を得ようとしています。同じ薬が2度もその地位を変化させてくるという歴史的な流れは興味深いものがあります。

(引用文献:日経メディカル 20175月号、P5054.)