医療あれこれ

血液と血管 (2)

血栓の話で第1回目は動脈と静脈のことを説明しました。それでは動脈に形成される血栓と静脈に形成される血栓のできるメカニズムはどのように異なるのでしょうか。

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血栓形成を理解するためにまず血液を固める機序を簡単に説明します。血管が切れて出血が起こるとこれを止めるために血液は塊を作ります。これが止血のための血栓、止血血栓です。この血栓を作り出す機序は主として2系統あります。一つは血小板という小さな細胞(血球)です。この血小板が傷口に粘着し、それがもとで血小板同士が固まりを作って血小板血栓が形成されます。血管が切れるとまずこの機序が働くことから、血小板血栓形成を一次止血といいます。これで血管にできてしまった穴が完全にふさがれればよいのですが、実はこの血小板血栓は強固なものではありません。血液の流れが激しいところや、血管にできた穴が大きければ血小板血栓だけでは完全に止血することができないのです。そこでこれを補うために血液の液体成分(血漿)に含まれる凝固因子というタンパク質が働きます。10種類以上の凝固因子が順次活性化され最終的にフィブリンという凝固因子の塊が形成されます。これが一次止血でできた血小板を補強して血管の穴をふさぐのです。これを二次止血といいます。

一次止血と二次止血の話を判りやすくするためにたとえ話をします。血管内の血液の流れを川の流れと考えてみて下さい。大雨が降って川の堤防が切れてしまうようなことが起ったとするとこれが出血です。堤防が切れてしまうわけですから、これを修復しなければなりません。血管が切れて出血が起った時、この穴をふさぐことと同じです。川の氾濫ではまず応急的に堤防を補強する作業がおこなわれるでしょう。消防団などが出動して土のうを積んで堤防を補強します。しかしいうまでもなく土のうの堤防は強固なものではありませんから、また大雨が降るとすぐに壊されてしまいますので、できるだけ早くコンクリートのしっかりした堤防に直す必要があります。つまり、血小板でできた一次止血の血栓は壊れやすい土のうの血栓、コンクリートで固められた強固な血栓はフィブリンでできた二次止血血栓というわけです。