便秘を訴えるお年寄りは多くいらっしゃいます。厚生労働省の調査でも、65歳以上の人では、人口千人中、男性で76.5人、女性で96.1人とされていて、65歳以下の人に比べて明らかに効率です。
疾患としては、明確な便秘の定義はありません。一般的には、排便回数の現象、排便量の減少、便が硬いなどの症状があるものをいいます。しかし腹痛やお腹が張るなどの症状を伴う場合や、排便時に強くきばらないと排便できないような状態、排便が不十分で便が残ったような感じが強い場合などさまざまです。
分類としては、その時だけの急性便秘と、常に症状が続く慢性便秘の二つに分けることができますが、便秘の発生する機序でみると、腸が閉塞しかかっている腫瘍や炎症などによるもの(器質的便秘)と、腸の動きが鈍くなっているもの(機能的便秘)に分類することができます。その他、神経疾患などの病気の合併症状として便秘がみられることもよくありますし、ある種のお薬(例えばうつ病の薬や精神安定剤など)の中には腸の動きを抑制して便秘という副作用が発生するものもあります。
いずれにしても、高齢者は、日々の運動不足や日常生活動作が若い人に比べて少なくなっていますから、腸の運動や緊張が低下し、便秘になりやすいと思われます。また、大腸の知覚が低下し、便がたまっているのに便意を感じない。そのため便が固くなりやすいことや、腹圧が弱くなって排便しにくい状態をより悪くすることも便秘の要因として考えておく必要があります。
便秘の治療ですが、原因となる疾患がある場合はまずこれに対する処置が必要です。またお薬が原因である便秘の場合、このお薬を中止し、ほかのものに変更するなどの対処を考えます。明らかな原因がなく、腸の動きが鈍くなっている機能的便秘の場合は、まず生活習慣を変えてみることが重要です。具体的には、毎日、朝食後に排便をする習慣をつける、食物繊維の多い食事や、水分をしっかり摂る、さらに腹圧を少しでも高めるような腹筋や腹式呼吸などを試みてみることも有効なことが多いと思われます。
これらの一般療法で、便秘の改善がない場合、便秘薬を用いた薬物療法ということになりますが、先に説明しましたようにいろいろなタイプの便秘がありますので、便秘の状況やその他の症状を考慮して薬剤を選択することが重要です。