甲状腺とは
のどぼとけのすぐ下で蝶々のような形をした臓器が甲状腺です。食物中のヨードを材料にして甲状腺ホルモン(T3、T4)が作られます。甲状腺ホルモンの産生量は脳の中にある下垂体という臓器から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。甲状腺ホルモンは体の新陳代謝を活発にし、神経・精神活動や身体活動を調節するためにはたらいています。
甲状腺ホルモンが多くなる
何かの原因で甲状腺ホルモンの産生量が多くなった状態を「甲状腺機能亢進症」といいます。このうち最も頻度の高いのが「バセドウ病」です。甲状腺ホルモンは体の代謝を高め精神神経を調節するホルモンですからバセドウ病になると体がやせてくる、暑がりでよく汗をかく、動悸がする、手が振るえる、イライラするなどの症状が現れます。さらに甲状腺が腫れ(甲状腺腫)、目が大きく飛び出してくる(眼球突出)という典型的な所見を認めるようになります。
バセドウ病の治療
甲状腺ホルモンの産生を抑えるお薬を服用します。そのとき血液中の甲状腺ホルモン(T3、T4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の変化を観察していくことが大切です。場合によっては手術療法も考えられます。いずれにしても悪性の病気ではありませんから経過は良好です。
甲状腺ホルモンが少なくなる
バセドウ病とは正反対に甲状腺ホルモンがへる病気が「甲状腺機能低下症」で、最も頻度がたかいのが「橋本病」と呼ばれる甲状腺の慢性炎症です。症状もバセドウ病とは正反対で、寒がりで皮膚が乾燥し、無気力や集中力低下など精神活動性の低下があります。新生児の甲状腺機能低下症は「クレチン病」と呼ばれています。
橋本病の治療
甲状腺ホルモン(T3、T4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血液中の濃度を観ながら、甲状腺ホルモン剤を服用します。適正にコントロールしておけば恐ろしい病気ではありません。
甲状腺腫瘍
甲状腺にできる腫瘤の多くは「結節性甲状腺腫」という良性腫瘍です。甲状腺ホルモンが増加する場合と甲状腺機能が変わらない場合があります。悪性腫瘍もあり、中には進行が早く悪性度の高いものも含まれます。治療としては良性でホルモンに影響のないときはそのまま経過観察する場合から即刻、手術により摘出する必要がある場合までさまざまです。