COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、以前にもご紹介しましたが(2012年11月19日医療あれこれ)、慢性的な喫煙などが原因となり、左の図のように肺胞が潰れていく病気で,息をすぐにはき出せなくなるという呼吸機能の低下(一秒率の低下)が発生します。教科書的には喫煙が最も重要な危険因子とされています。しかしタバコを吸ったことがない、あるいは周囲にタバコを吸う人がいないにもかかわらずCOPDに罹患してしまう人もおり、喫煙以外の生活習慣との関連が想定されていました。その1つが食生活の影響です。
今回米国ボストンのマサチューセッツ総合病院などが中心となり、約12万人の看護師などの医療従事者を対象として1984年~2000年の期間にわたって新たに何人の人がCOPDと診断されるに至ったかを調査した大規模臨床研究の結果が発表されました。この間における食生活の指標としてAHEI-2010(Alternate Healthy Eating Index 2010)が用いられましたがこれは、野菜・全粒穀物(未精白の穀物)・多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸など)・ナッツ類を多く摂り、飲酒は適度にして、赤身肉・加工肉(ハムやソーセージなど)・精白穀物・糖分を控えるなどをしているとスコアがよくなるというものです。
その結果、女性で723 人が、男性で167人がCOPDを発症したのですが、AHEI-2010スコアとの関連をみると、AHEI-2010スコアの高い人ほど、つまりよい食生活をしている人ほど有意にCOPDが発症しにくいというものでした。この食生活の影響は、喫煙や運動、肥満度など他の要因とは独立した別の要因であることが判りました。
これらの結果は、COPD発症の予防に禁煙はもちろんのことですが、健康的な食生活も重要であることを示しているものと思われます。
引用文献:BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h286 (Published 03 February 2015)
Cite this as: BMJ 2015;350:h286