改めて言うまでもありませんが、糖尿病はそれ自体の自覚症状が問題というより、糖尿病合併症が恐ろしい病気です。三大合併症といわれる、糖尿病性網膜症(目の奥の網膜が障害されて眼が見えなくなる)、糖尿病性腎症(腎機能が障害されて最終的に人工透析が必要になる)、および糖尿病性神経障害(手足の感覚がなくなってしまう)があります。しかしこれより恐ろしいのは、糖尿病性大血管障害と言われるもので、心筋梗塞や脳梗塞、あるいは足の動脈などがつまってしまう閉塞性動脈硬化症などは、生命の危機に陥ったり、足を切断しなくてはならなくなったりします。
以前からこの項でご紹介していますが、糖尿病の患者数は増加しています。日本において糖尿病患者数は約1000万人弱で、糖尿病になる可能性が否定できない糖尿病予備群も1000万人を越えています。全世界で見ると、糖尿病患者数は2億5000万人といわれ、全成人の約5~6%となります。年間380万人以上が糖尿病合併症などが原因で死亡しており、10秒に1人が糖尿病関連疾患で命を奪われている計算となります。
国連では2006年、国際糖尿病連合(IDF)ならびに世界保健機関(WHO)が定めていた11月14日を「世界糖尿病デー」として指定し、世界各地で糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発運動を推進することにしました。キャッチフレーズは「糖尿病との闘いのため団結」で、国連や空を表す「ブルー」と、団結を表す「輪」を使用したシンボルマークを採用し、糖尿病抑制に向けたキャンペーンを推進しています。日本各地でも、シンボルカラーのブルーで建造物などをライトアップされました。
ところで、この11月14日はインスリンを発見したフレデリック・バンティング(1891~1941、右の写真)の生まれた日です。インスリン発見の経緯については以前「医療の歴史(26)」でご紹介していますので、次のアドレスをクリックしてご覧下さい。http://www.suehiro-iin.com/arekore/history/26.html