医療あれこれ

医療の歴史(43) 最古の内服薬:酒
2014年7月19日

 昔から、「酒は百薬の長」といわれているように、古代からの内服薬として酒が用いられていました。富士川游著の日本医学史綱要にも「薬物の内用は、酒を以てその始めとすべし」と記述されています。医療の歴史(36)でご紹介したように、医薬の祖;少彦名命は、病気を治す薬の一つとして酒造りの技術を普及させたとのことです。

 酒の薬効としては、適度の飲用により、食欲を亢進させ、精神的ストレスを緩和すること、また血管を拡張させることにより血液循環を良好にするなどが考えられます。しかし古代に「酒は万病を除く」とされていたのは、酒に酔うと一時的にでもさまざまな苦痛が緩和されるという程度のものだったのでしょう。

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 一方、漢方薬に使われる生薬を原料の一部として醸造されたいわゆる薬酒は、日本においてもその歴史は古く、奈良の正倉院に伝わる739年頃の文書に「写経生の足のしびれに薬の酒を飲ませる」ことが記述されています。薬酒は後漢時代の中国から漢方薬とともに日本に伝えられたもので、酒のもろみに薬材を添加し発酵させる発酵薬酒と、酒のなかに薬材を浸して作る浸薬酒の2種類ありますが、古代からの浸薬酒として代表的なものが「屠蘇(とそ)酒」です。56種類の生薬を酒やみりんに漬け込んで作るもので、正式には屠蘇延命散といいます。元旦に屠蘇を飲み一年の無病息災を願う正月の風習は、811年に宮中で行われたのが始まりだそうです。




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