医療あれこれ

甲状腺機能異常と妊娠
2014年1月13日
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 甲状腺ホルモンは体の代謝を司るホルモンです。妊娠・出産と甲状腺機能には密接な関係があり、甲状腺機能異常症は妊娠・出産の前後に変化することが多く、また妊婦さんのみならず胎児や新生児に色々な影響を及ぼすことが知られています。

 女性が妊娠すると絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが分泌されますが、このホルモンは妊娠を継続するために重要な役割を持っています。またhCGが高値になることが妊娠したことを示すマーカーにもなります。hCGはまた、甲状腺刺激ホルモン(TSH)と類似の作用をもつことが知られています。通常、TSHは脳下垂体から分泌され、首ののどぼとけのところにある甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを分泌させるのですが、(このことは2012122日付の医療あれこれで説明していますので参照して下さい)、妊娠により分泌されるゴナドトロピンも甲状腺ホルモンを分泌させる作用を持っているのです。甲状腺ホルモンは胎児の発育に大変重要な作用を示しますので、妊娠により分泌されるゴナドトロピンが胎児成長のために体の中に甲状腺を蓄えている可能性が考えられています。

 ところで、バセドウ病のように甲状腺機能亢進症の人の妊娠にはどのような影響があるのでしょうか。以前から甲状腺ホルモンが過剰の時には、不妊となりやすく、妊娠したとしても流産や早産がおこりやすいことがよく知られています。そこで、バセドウ病で治療中の人はより厳密に甲状腺ホルモンのコントロールをする必要があります。また逆に甲状腺ホルモンが少ない甲状腺機能低下症でも、上述のように甲状腺ホルモン不足により胎児に悪影響を及ぼすことも考えられます。

 しかし、いずれにしても適切な治療をすることによって、安全に妊娠・出産することができるようになり、不妊や流産のリスクが少なくなるといわれています。この際には、甲状腺機能調節のための治療薬選択などを慎重に行う必要がありますので、妊娠を希望される方、あるいは妊娠した可能性がある方はすぐにお知らせ下さい。





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