2013年12月2日~6日、メルボルンで開催された第22回世界糖尿病会議のなかで、糖尿病発症に関して「現代社会に関連した新たな糖尿病発症リスク」についてのシンポジウムが行われました。これまで糖尿病の発症要因としては、遺伝歴のほか加齢、肥満などが確立した危険因子として知られていますが、現代社会における新たな危険因子が注目されています。
米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究者からは、不適切な時間睡眠、不眠などの睡眠障害が糖尿病発症リスクを高めるというデータが報告されています。睡眠時間が短い、あるいは逆に長い場合どちらも有意に糖尿病発症リスクが高まることが指摘されました。また不眠については特に、なかなか寝付くことができない「入眠障害」や夜中に目が覚める「中途覚醒」で有意に糖尿病リスクが高まるとのことです。(不眠症については、2012年5月19日付けの医療あれこれで少し説明していますので参照して下さい。)
また米国ワシントン大学の研究者は、ストレスや人格などの心理的特性と糖尿病発症の関連を説明しました。特に男性において心理的ストレスが高まると糖尿病リスクが上昇するけれども、女性ではこの傾向は認められないそうです。また人格と糖尿病との関連では、攻撃的、挑戦的で責任感の強い人は高リスクであることを指摘しています。
このシンポジウムとは別に、日本の研究者から、睡眠時間が5.5時間未満の人、および8.5時間以上の人では糖尿病による腎障害が有意に増加するというデータが報告されています。つまり睡眠時間が短くても、長すぎても糖尿病になりやすいことを示しているものと考えられます。
現代社会においては、歴史的にこれまで考えられなかった病気発生の危険因子が増加してきています。ストレスの全くない社会生活は考えられないでしょうが、できるだけ心に余裕を持った生活をして行きたいものです。