市民健診でも実施されていますが、便検査で潜血反応が陽性になると、早期の大腸ガンや大腸ポリープがある可能性を考えなければなりません。この検査はヒトの赤血球に含まれるヘモグロビンを検出するもので、自分の便中に含まれるごく微量の血液成分を発見します。その原因となる可能性があるのが、早期大腸ガンや大腸ポリープで、これを大腸カメラで切除しておくと、手遅れになった大腸ガンを発見するよりも確実に治療することになるわけです。ちなみに昔の便潜血反応は、ヒトの血液だけでなく、他の動物のそれも検出することから、前日に食べたビーフステーキで陽性となってしまうことがあり、検査も大変でした。しかし現在行われている便検査の結果は鋭敏に大腸疾患の存在を教えてくれます。
最近、権威ある英文医学雑誌に、この便検査による大腸ガン検診の有効性についての論文が2つ発表されました。一つはハーバード大学からで、約8万人の人について22年間追跡調査した結果です。便検査を行っていると大腸ガン発生の危険性は、40~60%低下したそうです。また大腸ガンによる死亡リスクも41~68%低下したとの報告でした。
もう一つはアメリカのミネアポリス退役軍人省保健医療システムというところからの論文で、こちらは4万人の調査ですが、何と30年におよぶ追跡調査が実施された結果が発表されています。それによると、30年という長期間の調査ですから、その間に亡くなった方は、全調査対者4万人のうち3万3千人いたそうですが、大腸ガンによる死亡数は毎年、検便検査をうけていた人ではわずか200人だったとの結果でした。
以前にこの項でも触れましたが、病気を早期発見・早期治療するよりも予防することの方がよいことは言うまでもありません。しかし100%予防することは事実上困難なことが多いのが現実ですので、やはり早期発見のために確実な方法を確立していくことも大切です。
文献:New England Journal of Medicine (2013) 369,
1106.