年齢を重ねるにつれて、皮膚のかゆみを訴える人が多くいらっしゃいます。この場合、若い人のかゆみと異なって、抗ヒスタミン剤などアレルギーを抑える塗り薬などはほとんど効きません。加齢に伴う皮膚の乾燥が主な原因とされているからです。
それでは、高齢者における皮膚の乾燥を招来する要因は何でしょうか。高齢者は、皮膚の微小血液循環が低下して皮膚乾燥が起こりやすいことも考えられます。また性ホルモン分泌が低下して皮膚の保湿に重要な皮脂腺の働きが低下していることが想定され、そのため皮膚をおおう皮脂(あぶら分)が減少しています。また低栄養や脱水の傾向にある人や、運動量の少ない人で発汗量が低下し、さらに暖かい部屋にいる時間が長くなると、この傾向はさらに強くなります。そして皮膚の水分量が低下すると、知覚神経が表皮の中まで延びてきて、かゆみの感覚を増強する影響もあります。
かゆみの対策として、塗り薬だけで治療を試みても効果が十分でないこともしばしばあります。生活習慣を見直して、冷暖房の使用をできるだけひかえ、熱い風呂に長時間入ったり、皮膚を刺激しやすい静電気が発生するような素材の衣服を極力さけることが必要です。
一方、皮膚の乾燥が原因で、かゆみがおこる以外に、薬によるもの、肝臓疾患、糖尿病、ホルモンの病気などが隠れている場合もありますので、症状が続く時は一度これらの検査をしてみることも必要になります。
文献: 新谷洋一他 日本医事新報(2013)4652、p64.