乳ガンの多くは女性ホルモンであるエストロゲンの受容体(ER)があり、エストロゲンの影響を受けて乳ガンが発生します。この乳ガンをER陽性乳ガンと呼んでいます。これらの症例に対しては治療法としてホルモン療法が有効なことが多く、抗ガン剤とともに用いられます。一方、一部の乳ガンではこのエストロゲン受容体がなく、ホルモンの影響を受けずに発生すると考えられており、ER陰性乳ガンと呼ばれます。
この度、このER陰性乳ガン、つまりその発生にエストロゲンが関与していない乳ガンの発生リスクは野菜を多く食べる人では低いことが米国ハーバード大学の研究グループが発表しました。5千人弱のER陰性乳ガン症例を調べたところ、野菜の総摂取量と乳ガン発生リスク低下には統計的に有意な関連が認められたそうです。しかし、逆にER陽性乳ガン(つまりエストロゲンの影響を受けて発生した乳ガン)と診断された約2万人弱の症例ではこの関連性は認められませんでした。またER陽性・陰性に関わらず乳ガン全体でみてもこの関連性はありませんでした。さらに野菜ではなく果物の摂取と乳ガン発生リスクも検討されましたが、関連性はなかったそうです。
詳しい機序は明らかではありませんが、野菜を多く食べていると、少なくとも一部の乳ガンを予防することにつながるようです。
文献 J. Natl. Cancer. Inst. 2013; 105: 219-236.