生活習慣病としての糖尿病の発症は、肥満と関連していることから、体重や体脂肪量と相関するのではないかと一般に思われます。しかし、米国の研究チームから、糖尿病発症リスクは、体脂肪量、皮下脂肪量、また体重と身長から算出した肥満指数であるBMIなどとは関連性がないことが発表されています(JAMA 2012,308:
1150-1159)。ただし脂肪のうちでも内臓脂肪量と糖尿病発症リスクは統計的に有意な関係があるということです。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪蓄積が源流にあって、皮下脂肪の量とは関係が無いということをお聞きになったことがあると思います。右の図をご覧下さい。これは腹部断層写真(CTスキャン)の模式図です。皮下脂肪は体の表面にありますので、お腹の上からつまむことができます。それに対して内臓脂肪は体の内側にあることから表面からつまむことができません。メタボリックシンドロームはこの内臓脂肪蓄積が問題になるのです。皮下脂肪と違って、内臓脂肪では動脈硬化や血栓症を引き起こす物質を多く作っています。そこで内臓脂肪蓄積があるうえに、血圧が高い、中性脂肪が多い、血糖値が高いなどがあるとメタボリックシンドロームと診断されるわけです。ちなみにメタボ健診で受診者全てに腹部CTスキャンをすることができませんから、内臓脂肪蓄積をお腹周りの測定で判定しているのです。いろいろな問題点も指摘されていますが、臍の周囲径が男性では85 cm、女性では90 cm以上あると内臓脂肪蓄積ありと判定します。なぜ女性の方が長いのかというと、女性では皮下脂肪が多いことを考えるとこれぐらいの差があるというわけです。
話は戻りますが、糖尿病発症が内臓脂肪蓄積と直接関連するけれど、皮下脂肪や体全体の体脂肪と統計学的に関連がなかったという今回の報告は納得できるものだと考えられます。糖尿病に限らず、一般的に言われる生活習慣帽予防にはこの内臓脂肪蓄積を食事や運動で予防することが大切になってきます。