人工多能性幹細胞(iPS細胞)を創出した功績で京都大学の山中伸弥先生がノーベル医学・生理学賞を受賞することが発表されたのはご存知の通りです。大変おめでたいことで、日本人の誇りだと思います。
山中先生がiPS細胞を創られるまでにも、さまざまな体の組織に分化する幹細胞は胚性幹細胞(ES細胞)の研究が行われていました。しかしこのES細胞を作るために受精卵が用いることから生命の原点を使うという倫理的な問題が大きく立ちはだかっていました。それに対してiPS細胞は人の皮膚組織などから作られたもので、ES細胞のような問題も生じません。
これまでノーベル賞といえば、何十年も前の研究業績などが評価されて受賞するということが多かったのですが、山中先生がマウスでiPS細胞を作ったと発表したのが2006年、人の細胞からiPS細胞を作ったのが2007年ですから、最初の研究成果から5~6年でノーベル賞を受賞することになりました。異例の速さだと思います。
ただこの受賞が発表された10月8日来のマスコミ報道を見ていて、少しだけ気になったことがあります。iPS細胞は再生医療や難病の病態解明、新しい治療法の開発に大変有用であることは事実ですが、これらの新しい医療が今すぐにできるわけではありません。実際の患者さんに対してiPS細胞を用いた医療技術が使用されるようになるには、これから先に長い道程があることが忘れられているようにも感じました。
それにしても、この受賞は日本人にとって、また山中先生の地元の大阪府民にとっても、大変誇らしいことです。医療のさらなる発展のためにも、この研究が益々発展することを祈念致します。