7月28日付の「医療あれこれ」で、「睡眠時無呼吸症候群」をご紹介しました。その中で、「睡眠時無呼吸症候群」は心臓・血管などの合併症を引き起こすことを説明したしたが、このたび、欧米のいくつかの大規模臨床試験で、「睡眠時無呼吸症候群」は高血圧症発症の明らかな原因であることが証明されました。
ほとんどの高血圧症は、明らかな原因となる疾患がない「本態性高血圧」です。「本態性高血圧」は原因不明ではなくて、もともと血圧が高くなる遺伝的な素因があって、そこへ塩分の多い食事を食べたり、運動不足・精神的ストレスなど乱れた生活習慣が高血圧を発症させるというもので、典型的な生活習慣病です。血のつながりがある親・兄弟に高血圧で治療中の人がいる場合、生活習慣を正していかないと高血圧になってしまいます。
「本態性高血圧」とは別に、ごく一部の高血圧ですが、「二次性高血圧」があります。これは明らかな原因となる疾患があり、高血圧を発症するものです。例えば、血圧を上げるホルモンが多くなる内分泌疾患があります。このうち「原発性アルドステロン症」は、副腎皮質というホルモンを生成する臓器からアルドステロンという血圧上昇作用があるホルモンが分泌されておこりますし、「クッシング症候群」という疾患は同じく副腎皮質ホルモンのコルチゾール分泌が過剰になって高血圧となります。また腎臓の病気や、腎臓へ血液を送っている腎動脈が細くなっているような場合にも高血圧をおこしてきます。「腎性高血圧」「腎血管性高血圧」と呼ばれます。これらは、高血圧症と言われている人のごく一部の場合ですが、原因疾患があって、そこから二次的に高血圧となりますので「二次性高血圧」と呼ばれています。「二次性高血圧」は原因となっている疾患の治療ができれば高血圧はよくなります。
さて「睡眠時無呼吸症候群」は以前にご説明しましたように明らかな病気です。今まで明らかな原因疾患がない「本態性高血圧」と診断されていた人の中にも睡眠検査を行ってみるとかなりの確率で「睡眠時無呼吸」があることも報告されていました。これはしかし、肥満が原因で高血圧となり、一方で肥満が原因で睡眠時無呼吸となっているだけにすぎないとする意見がありました。つまり睡眠不足という生活習慣の乱れで高血圧になっているという考えでした。しかし今回の大規模臨床試験研究は、「そうではない。睡眠時無呼吸症候群は明らかな高血圧の原因疾患である。」ことを証明したのです。そこでアメリカの高血圧合同委員会は「二次性高血圧」の原因疾患に「睡眠時無呼吸症候群」を新たに付け加えました。
7月28日付でご紹介したように「睡眠時無呼吸症候群」と診断されると、必要に応じてCPAP治療を行います。そうすると高血圧は改善したという報告がされています。ということになると血圧を下げるお薬が要らなくなる、あるいは服用する量を減らすことができると思われます。